kichitanu’s blog

気弱人間のお仕事と本と現実逃避

IT企業では使われない? アンケートリサーチの限界を知った日

以前リサーチャーと言われる仕事をしていました。いわゆるマーケティングリサーチを行う仕事です。リサーチにはアンケートを行う定量調査とインタビューや座談会を行う定性調査の2種類があります。

 

IT企業に転職してみて、この職種はいつか利用機会が減り、需要が減ってしまうのではないかと個人的に思ったことがありました。完全になくなることはないと思いますし、そうであってほしいと願っています。自分なりにマーケティング・リサーチャーという職種について、考えてみます。

 

IT企業に転職したら、リサーチが社内でまったく使われていなかった

私は転職し、リサーチャーとして採用されました。いわゆる事業会社の社内リサーチャーです。もともと受託でリサーチの仕事を受けていましたが、社畜っぷりが極まってきたことと、クライアントとの金の切れ目が縁の切れ目状態に嫌気がさし、転職しました。

 

私が最初に行った主な業務は、広告の効果測定の仕事です。他に受けた相談は、新規サービスの案を後押しする根拠となるデータは何かないかでした。私の仕事は、広告の効果測定、根拠となるデータづくり、認知度などの基礎的なブランドイメージ調査のいずれかでした。

 

そして、これらの調査結果は、社内で知る人ぞ知るものでした。ボードメンバーに共有する機会はありましたが、マクロからの情報は特に経営に生かされているようには見えません。そのうち、私の仕事は根拠となるデータづくりが重きを占めてきて、だんだんと虚しくなってきました。

 

ITの企業で活用されていたのはログデータオンリー

ITの企業では、Webサイトのアクセスログデータが活用されていました。実際に人が行動をしたデータです。ログデータにももちろん向き不向きがあり、苦手分野があるわけですが、ログが浸透している社内では、使い分けがうまくされているという状態ではありませんでした。ログでできないものを仕方なくリサーチに頼るという方向性に見えました。

 

リサーチは過去を見る仕事なのか、未来を見る仕事なのか

リサーチの限界も感じました。リサーチは過去を見る仕事であり、なおかつ回答者本人が自覚していることしか分かりません。しかもその本人の自覚が間違っていることもあるのです。たとえばさまざまな見栄から知らないのに「知っている」と答えてしまうことはよくあります。逆にアンケートの答えるのが面倒で「知らない」と答えることもあります。

 

アンケートは男女比でいうと、通常女性のほうが多く、高年齢化の傾向にあります。20代以下を集めるのは難しくなってきています。アンケートパネルに登録する人が少ないのです。

 

ログと紐づけるアンケート結果に何の意味が

リサーチの活路を見出そうとしたためか、ログデータと紐づけてアンケートが見られる、行動と意識のかけ合わせというサービスもありました。一度導入しましたが、当時は集計に難航していて柔軟な分析が難しく、不便に思いました。また、結果も「なぜ?」と問いただしたくなるような矛盾がありました。アンケートではAというサービスを使ったといっているのに、実際にはBというサービスを使っているのです。

 

人間の記憶とは曖昧なものなので、きっとこれはその人の記憶にとって真実なのですが、どう受け止めたらいいのか分かりませんでした。

 

人間中心設計との出合い

そのような中で、人間中心設計の勉強会に参加する機会がありました。こちらはデプスインタビューを中心に進めていったり、観察をする手法を用います。興味がある方は調べていただければと思いますが、ユーザーテストからプロトタイプをつくって、テストを繰り返す方法に活路を感じました。

 

実際に社内で取り入れてみたところ、企画者や技術者が自信満々で出してきたサービスに対し、思いもかけない反応があり、リサーチでは一切効かなかったのに、打ちのめされたり、見直す方法を見つける姿にようやくこれだと思いました。

 

IT企業でリサーチを活用するなら定性調査

IT企業でリサーチを活用するなら定性調査がいいと思います。ログとのセットが最適です。ABテストでもいいですが、まだサービスがなかったり、サービスに至るまでの過程に悩んでいるなら、定性調査でインタビューをもとにプロトタイプをつくり、思考発話法でユーザーテストをして、改善を繰り返していくのがいいと感じました。

 

リサーチは私のいたIT企業では浸透しなかった

ユーザーテストの浸透には成功しても、市場調査の社内の活用には至りませんでした。私はリサーチを浸透させたかったのではなく、あくまで手段として必要なときに使えることを知ってもらいたかったのです。

 

きっとこの会社の将来の方向性にはリサーチが必要だと思ったから。思ったよりも自分たちのサービスなんてちっぽけで、気にもかけていないことを知ってほしかったから。それを受け止めたうえでの戦い方があると思っていました。

 

でも結果として、私の力及ばずでした。

 

もっと良い解決策が見いだせたと思いますし、本当にド文系の自分の力不足ではあると思いますが、当時はもっと活用ができるはずだと信じ、何とか模索していました。もっと良い解決策があったと思っています。結果の共有についても、私が忖度する人間だからはっきり言えなかったのです。

 

IT企業でうまく浸透させられなかった自分の反省をただ述べている記事になってしまいました。リサーチもしょせん何かを達成するための手段なので、人の心に響かなかったのであれば、やはり必要ではなかったのかも、とも思います。今となっては…。

 

ここまで私の個人的な意見を読んでいただきありがとうございました。